目が覚めて、ふと辺りを見回すと、いるはずのない場所にいた。なんで、わたしがここにいるの? 原稿の締め切り、ただでさえデッドライン過ぎてるのに、どうして三点拘束されなきゃならないの。
これは、日常生活のどたばたから、無意識かつ強制的に閉鎖空間へと送り込まれた28歳バツイチの雑誌ライター・明日香が綴った14日間にわたる絶望と葛藤、そして再生のドキュメントです。 恋人との別れ話から、オーバードーズ(薬の過剰摂取)してしまった明日香は、救急車でK精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられてしまいます。周囲にいるのは、体重30キロでも、さらにやせようと努力する拒食症患者、自分の悲しき過去をくどーく語り続ける元AV女優、何を言っても事務口調、完全無欠の鉄仮面ナース……。逃げ場がないからこそ、些細なことがサスペンスとなり、ギリギリの状況から笑いが生まれます。
いるはずのないわたしが何故ここにいるの? 何度も自問し、言いようのない怒りと被害者意識にさいなまれる明日香。果たして彼女はこのまま絶望の淵に堕ちてしまうのか、それとも……。 『文學界』2005年7月号に一挙掲載され、話題をさらった問題作!
  「小説は究極の表現手段」と言い切る松尾スズキ氏が贈る、小説でこそ為しえた究極の世界。エンジン全開の衝撃的な冒頭シーンに混乱させられ、心地よい余韻の残るラストシーンでは、しんみりと考えさせられてしまいます。
2005.12
(文藝春秋/高木)