(『星の遠さ寿命の長さ』の続き→)で、『星の遠さ〜』を出版したところ評判も売れ行きも良くてシメシメと思っていたのでしたが、それから1年も経たないうちに、僕が「クイックジャパン」の編集長をやることになったのです。もう5年以上も前の話です。そこで、とりあえず僕は松尾さんに会いに行きました。そしたら「渋谷の東急文化村に来てくれ」と言われて、あんまり松尾さんらしくない、こじゃれた場所で待ち合わせするなーと僕は思いました(今から思えば舞台『キレイ』の下準備だったのですね。幼虫・松尾スズキが、芸能人・松尾スズキへと孵化する時期だったのですね)。で、「クイックジャパンで、なんか連載やりませんか?」「なんかって何?」「それは松尾さんが考えてください」「いい加減にしろ!」みたいなやりとりがあって、その数日後、「スズキが覗いた芸能界、というタイトルでいこうと思うんだけど……」というような電話が松尾さんから入ったのでした。その連載をベースにまとめられたのが本書です。コンセプトは、タイトルのとおり。26歳で上京してきた元・サラリーマンが、下北沢でヒモをやりつつ劇団を立ち上げ、それがあれよあれよと言う間に松田龍平主演の映画を監督したり、ゴールデンタイムのドラマでジャニーズと共演したりするまでの課程を回想したものです。言ってみれば松尾スズキ流「成り上がり」? で、連載原稿に加えて(奥菜恵さんや爆笑問題のお二人との)芸能界についての対談を再録して。さらに読者をお腹いっぱいにするために、日本テレビ・大塚恭司さん(『演歌なアイツは夜ごと不条理な夢を見る』プロデューサー)やTBS・磯山晶さん(説明不要ですよね?)と新たに対談をしていただいて。特に大塚恭司さんとの対談は、若い読者の皆さんにはぜひ読んでいただきたいと思っています。TV業界が今よりも全然自由だった80年代に、「でも、そこまで自由だと思ったら大間違いじゃ!」と怒られつつムチャを重ねた勇者二人(松尾&大塚)の記録は、きっと何かしらの勇気を読者に与えてくれることでしょう。以上です(連載中、松尾さんの誕生会の度に僕がボロ雑巾のようになったエピソードは本書にあるとおりなので省略します)。
2004.10
(太田出版/北尾修一)