音楽誌BUZZにて、超人気コラム『この日本人に学びたい』に引き続き3年にわたり連載された、松尾スズキ初の短編小説集です。ちなみに登場人物の名は、みのもんた、ピンクレディー、川島なお美、中村江里子、上祐史浩、乱一世、竹内力、田代まさし、広末涼子、小泉孝太郎、モーニング娘。etc……。言うなれば、前連載『この日本人に学びたい』があくまでコラムであり人物評であり世の中への憂いと批評眼であったとするなら、この『同姓同名小説』は人を愛して愛して愛しすぎて、氏の妄想と欲望の産物である架空の小説世界の中に登場してしまった、というものなのです。ていうか、連載中も100ぺん繰り返しましたが、“この小説は完全にフィクションであり、実在の方々とは何の関係もありません。同じ名前の別の人、としてお読みください”。本当、このルールだけは守ってくださいね? 松尾さんも僕らも、何か面倒臭〜い不幸な目に遭うのはこりごりですし。お互いもう大人なんだし。それにしても、本著をまとめていて、連載時の毎度毎度の抱腹絶倒以上に、時折涙がこぼれてしまいそうになるのは一体何だったんでしょうか? 具体的には、第一話「みのが、みのであるために」、第五話「上祐の夏」辺りに、私は読んでて思わずホロリとしてしまいました。第八話「田代の一番長い日」は、雑誌掲載時以後の顛末を思うと、違う意味でホロリとさせられます。そう言えば、今この文章を書いてる2002年10月18日現在、松尾氏は最新公演『業音』を絶賛上演中ですが、この『同姓同名小説』には「女優・荻野目」という話もあります(01年4月発売BUZZ初出)。こんな昔から「荻野目様と愛しあいた〜い!」という架空の小説世界に生きていたとは、おそるべし松尾スズキ! です。最新公演の人物設定を目の当たりにした今となっては、大人げないぞ松尾スズキ! という言い方もできます。うわあ、またいろいろ余計なこと書いてしまった気もするが、あくまで“この小説は完全にフィクションであり、実在の方々とは何の関係もありません。同じ名前の別の人、としてお読みください”です! そこんとこよろしくぅ。先にも述べましたが、笑いと涙、読む人によってあるいは話によって、どれだけ違うことでしょうか。 とにかく、傑作短編集だと私は胸を張って断言します。買ってください。あ、冒頭で書いた弊社刊『この日本人に学びたい』も併せて読むと、その二つを繋ぐ松尾宇宙とダイナミズムがよりスリリングに伝わるかもよ?
(BUZZ編集長/中本浩二)