熱血ファンシー担当者より
床屋さんでも美容院でも、ふと気づくとその店の中で私だけが、担当の床屋さんなり美容師さんと喋っていないことに気づき焦ることがある。どんな話題を振られても快活に受け答えする自信があるし、実際たまに話し掛けられたときは、ハキハキと応じるのに、どうもまわりの人たちみたいに持続力がない。最近では、「仕事で疲れて喋るのも億劫な人」という風を装い乗り切っているのだが、本意ではない。
と、いった感慨をこの方ならわかってくださるのではないか、というのが松尾スズキさんに会いたい、と思った一番の動機でした。松尾さんのエッセイや小説の連載を読みふけり、初めてご本人にお会いしたのは神楽坂の鳥料理のお店でした。鍋の中に凄く太いうどんの入っている。
松尾さんは思い描いていた通りの方で、決して饒舌ではありません。たいてい疲れてらっしゃる。鳥肉がお好き。ニヒルな笑い方をする。そのくせ、現在自分の周りで起こっている「面白いこと」だけは絶対見逃さないという気骨を感じるわあ。と思っていたら、「伊藤さんは顔の上半分が劇画のパーツで、下半分がギャグマンガのパーツだよね!」。
(「文庫版・ぬるーい地獄の歩き方」につづく)