コラム・エッセイ・映画評・雑文・脚本・四コマ漫画などなど、松尾スズキが10年余にわたりあちこちの雑誌等に書き綴ってきた作品を一冊にまとめたもの。言ってしまえば寄せ集め的な一冊ではあるもののやはりその才能は隠せず、大傑作『この日本人に学びたい』以上に好調なセールスを記録しました。そもそもは、『鳩よ!』の映画評があまりにも面白くて、「これ書きっぱなしで埋もれちゃってるんだよね」「マガジンハウスが出さないならうちでぜひ!」というところから始まったのですが、でもそれだけだと一冊にするには全然足りない、いやそもそもananとかで松尾さんのコラム読む度に「面白い! でもこれ、この一回きりであとに残らないんだよな、もったいない」と思ってたんですよ俺、だからもうこの際書き捨てになってる原稿は全部集めてしまいましょう、集めてみたけどまだちょっと足りない、「あ、こないだNHK−FMでラジオドラマ書いたよ」「それ! それいただきましょう!」というふうに進んだ本だったのでした。出版した当初、いろんな方から「よくあんなに古いのまで集めたねえ」とお褒めいただきましたが、白状すると大人計画に行ってスクラップしてあったファイルを全部借りてきただけだったのでした。長坂さん河端さんありがとうございました。ただ、シティロードに連載されていた四コマ漫画だけはどこにもなく、当然シティロード自体もとっくになく、やむをえず国会図書館に行ってページをコピーしてそれを掲載するという荒技に出たのも、今となってはいい思い出です。この本を出してから異動になり、担当からは外れてしまいましたが、「松尾スズキを担当して著作を二冊作った2年半」は、私の人生における盛夏として骨になるまで胸に残ることでしょう。まじで。
ちなみに、肖像画を使った装丁は、実は松尾さんご本人は気に入っておられません。当初は「永井流奈を表紙に使いたい」との案が松尾さんから出て、アート・ディレクターの田中力弥と二人して彼女の写真集を買い漁ったり神保町の本屋でサイン会があるというので実物を拝みに行ってみたり(ああいうグラビアアイドルのサイン会って、サイン会と握手会との二部構成に分けてやることを、そこで初めて知りました。そうすると二冊買うから。「えげつな〜」と思いました)したものの、本書のタイトルが決まるにあたり「このタイトルで永井流奈はあまりにも合わん!」と松尾さんを説得し、肖像画を使うことに決定。しかし、原画が上がったのでお持ちした時、一目見た瞬間「あっはっは!」と爆笑され、そのあとシーンと黙られてしまったのを、昨日のことのように憶えております。でもダ・ヴィンチ誌の「今月の装丁大賞」を受賞しました。そういえば、この本発売直前に松尾さんはゴールデンアロー賞演劇賞を受賞され、またもや帯に「祝・受賞」の文字が躍りました。
(ロッキング・オン編集者/兵庫)