星の遠さ 寿命の長さ 大人計画がまだ一部でしか知られていなかった頃だから、もう七〜八年ほど前ですが、「悦び組」(©北朝鮮)という何だかよく分からない新聞(ミニコミ?)を松尾さんがヒマにまかせて作っていて、それの愛読者だった僕は大人計画の事務所に遊びに行ったことがあります。僕も編集者になってまだ半年くらいの頃で、うまく企画に結び付ける話もできずにただお茶を一杯ご馳走になっただけで帰ってきてしまった記憶があります(そのとき松尾さんの横にガリガリの、明らかにここ半年ほどちゃんとしたメシを食ってなさそうな若者がいて「クドウです」と名乗っていたっけ)。その後、結局、障害者プロレスの会場とか川西杏さんのコンサート会場とかで松尾さんと何度か顔を合わせる機会があったのですが、松尾さんも僕も「やあやあ、どうもどうも」とかやるタイプでもないので、あんまちゃんとした話もせずに、そのまま時間だけがすぎていって、僕は僕で違う人の単行本を作ったり雑誌『クイックジャパン』で原稿を書いたりするのに忙しくて。たしかそんなときに松尾さんが『ファンキー!』で岸田戯曲賞を受賞したんですよ。失礼ながら当時の僕は松尾さんの思想/活動/姿形が今ほどメジャーになるとはこれっぽっちも思ってなかったので「これが最初で最後のチャンス! この機会を逃したら二度と松尾さんの本を作れないかも」と思って「松尾さんの生い立ち+これまでの全自作解説を一冊の本にしましょう」という(ほとんど松尾さんのことを現役引退した人扱いするような)無礼な提案をしたら、なぜかOKしてもらえて。ついでに巻頭に鶴見済さん(『完全自殺マニュアル』)との対談も掲載して。そしたらこういう本になったと。内容と具体的な編集実務に関しては『演劇ぶっく』の伊藤主枝子さんの力が大きいですね。松尾さんの他の著作と比較するとえらく丁寧な構成の本になっていますが、こんな凝った仕事、松尾さんと僕だけで出来るわけがない。一九六二年(松尾さんが生まれた年)から一九九七年(本書の発行年)までの松尾スズキの歩みは、本書を読んでいただければほぼすべて網羅できるのではないかと思います。あと、最後に一言言うとすれば……今作ればもっと売れたのに(笑)。我ながら編集者として失格だな、時流を見る目がないなと。反省することしきりです。というわけで松尾さん、いつかぜひ続編を作りましょう(商売人の目つきで)。松尾さんの作品には、どれだけ大仕掛けになっても、お金がかかっていても、必ずどこかに“テキ屋感覚”“カラーヒヨコ感覚”とでも呼びたくなるようなスペイシーないかがわしさが残っていて、それが僕の好きなダブという音楽とも共通していて、僕はそんな松尾さんの作品がいつだって大好きなのです。

本書のオビの表4で「生まれ変わりませんように」という言葉をループさせたのは今でも我ながら傑作だと思っている。
(太田出版/北尾修一)