今回も松尾さんみずからに装丁を手がけていただいたのですが、もう、太鼓判ものの仕上がりかと。キーワードは、“反物感”。和服の布地っぽい、というか。そこに、(烙印を押す)ドーンとか、(小判が割れる)パキンとか、音が聞こえてきそうな逸品ですね。カヴァー・ジャケットを彩る緑と朱は、たしか、2003年の松尾さんのラッキー・カラーだとか。ぜひとも、手にとって、味わってみてください。
つうわけで、以下、内容紹介。
エドがメイジにかわる頃、ニッポン人同士による(多分)最後の戦争が、だらしなく終わろうとしていた。官軍と旧幕軍彰義隊とがぶつかりあって、どう考えても(歴史的に見ても)後者の旗色悪すぎー、ってな状況。そこに現われたるが、素敵な小鳥を肩にのせた、新撰組残党〈山出灰次〉。もとはと言えばこの男、サムライを目指して東北地方の寒村から出てきたのだったが、その戦場にて、同じく武士志願でともに故郷を後にしたまま離ればなれになっていた弟の〈黒太郎〉と、吉原に売られていった幼馴染みの〈お吉〉と、運命の再会を果たした――という舞台の幕開きは、狂言作家にあこがれるあまり侍分をも捨てちまった〈加瀬実之介〉なる人物が作り出した世界のお話らしい。そんなこんなの入れ子式の物語は、鶴屋南北や河竹黙阿弥、井伊直弼らも巻き込みながら、贋金作り、仇討ち、天覧歌舞伎のエピソードをも巧みに織り込んで、怒濤のごとくつき進んでゆく……。中村勘九郎さんをして「松尾スズキさんの芝居には、歌舞伎の原点にも通じるいかがわしさがある」と言わせしめた演劇界の異才が、時代劇に初挑戦! 江戸時代の“おとな”の傾(かぶ)きっぷりを描いた「幕末大河ドラマ」だ。
(白水社編集部/和久田)