初エッセイ。 93〜4年『Hanako』に連載されたものがもとになっています。世は好景気、高級レストランやブランドを特集する女性週刊誌で、松尾さんのページは異色でした。前々任が田中康夫さんだったことをとっても、よくこの人選通ったなぁと自分でも不思議に思います。  書き手も新人なら、担当も新米同然。打ち切りにならないためには毎週が勝負。「誰にも面白くないなんて言わせない!」と、鼻息荒く、毎回120点の原稿を要求していたので、「サラ金に追っかけられているような緊迫感の日々」と松尾さんがおっしゃったのも無理はありません。ちょっと傷ついたけど。  それでも松尾さんは期待以上の原稿をあげてくれました。「面倒力」やら「がんばり限度」やら、独特の哲学をこねてつぶしてたたき込み、きっちり練り上げた「面白」。タクシーに負け、恋愛に負け、肩落とすズルズルな日々……。稽古場からタクシーで帰り、女優さんと飲みに行くような「大人」になられた今の松尾さんからすれば、初々しく、くすぐったい部分もあるかもしれません。でも、根底に描かれていることは普遍。4Bの鉛筆も折れんばかりの筆圧で(実際はシャープペンシルでしたけど)書かれた松尾氏入魂の作品。ファンの方にも、松尾さんを未だ知らない方にも、何かしら響くところのある間口の広い本だと思います。って褒めすぎ?
(初代担当/黒瀬朋子)